守りから固める家計術|固定費のプロ・葉山知世さんに聞く「節約から始める資産形成」

案内役キャラクターみらいと家計コスト分析調査員 葉山知世さんが、守りと攻めで家計を整える方法を語り合う対談イラスト

「固定費、削っているつもりなのに、なぜか毎月そんなに変わらない」——そう感じたことはありませんか。

将来のための貯蓄や資産形成も気になるけれど、まず足元の家計をどう整えればいいのか。守り(節約)と攻め(資産形成)、どちらから手をつけるべきか、迷いますよね。

この記事では、家計の固定費分析を専門とする葉山知世さんに編集部が取材し、「守りから固める家計の整え方」を伺いました。ガス料金の見直しから、浮いたお金を将来へ回すまでの道筋を、案内役のみらいとの対談形式でお届けしますね。

家計の見直しは、まず「守り」=固定費から着手するのが効果的です。ガス・通信・保険料など毎月続く固定費を一度整えれば、相場に左右されない確定的な余力が生まれ、その余力が将来の資産形成(攻め)の原資になります。

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家計コスト分析調査員・葉山知世さんのプロフィール写真。エネルギー・通信・保険といった家計の固定費を公的データで分析する専門家です。

お話を伺った方:葉山 知世(はやま ちせ)さん

家計コスト分析調査員/家計インサイトラボ 代表。大学卒業後、金融機関の家計相談部門で家計相談・コスト診断業務に約10年従事し、消費者団体・調査会社系でエネルギー・通信・保険等の固定費分析業務を経験。2022年に独立後、家計を圧迫する固定費を公的統計データから定量的に分析する手法を体系化。一般社団法人プロパンガス料金適正化協会の本部理事との共同調査を通じて、LPガス業界の料金構造分析を専門領域とする。

葉山知世さんのプロフィール


目次

家計は「守り」から整えると、なぜ効果的なのか

家計を整えるときは、投資などの「攻め」より先に、固定費という「守り」から着手するのが効果的です。守りで生まれる余力は相場に左右されない確定的なものであり、攻めの資産形成を無理なく続けるための土台になるからです。

まずは、家計を「守り」と「攻め」の両面から見る考え方について、葉山さんに伺いました。

みらい(案内役)

葉山さん、よろしくお願いします。保険や貯蓄って、つい一つひとつ「これは得か損か」で考えてしまうのですが、まず家計全体で見た方がいい、とよく言われますよね。それはどうしてなんでしょう?

葉山 知世さん(家計コスト分析調査員)

一つひとつの契約が、実は互いに影響し合っているからです。固定費を削って月々に余力が生まれれば、その分を将来の備えに回せます。逆に、備えを厚くしたいからと支出を増やしても、足元の固定費が漏れていれば、水を注ぎながら底に穴が空いた状態なんですね。私の分析はいつも、この「家計という器」の構造を可視化するところから始まります。全体像が見えて初めて、どこから手をつければ一番効くかが分かるからです。

みらい(案内役)

なるほど、器の穴をふさぐのが先なんですね。では「守り(節約)」と「攻め(資産形成)」は、どちらから手をつけるのがいいのでしょう?

葉山 知世さん(家計コスト分析調査員)

私見では、順番は明確に「守りが先」です。理由は2つあります。1つは確実性です。固定費の見直しで生まれる余力は、相場変動に左右されない、いわば「利回りが確定した節約」です。攻めのリターンは不確実ですが、守りの成果は動きません。もう1つは土台の話です。攻めの資産形成は、毎月無理なく続けられる余力があって初めて続きます。その原資を作るのが守りなんです。ですから、まず守りで足場を固め、そこで生まれた余力をどう攻めに回すか、という順番をおすすめしています。ただ、その「攻め」を具体的にどう設計するかは、保険や資産形成の専門領域です。私は足場づくりのほうを担当させてください。

守り①:固定費は「大きく・続き・一度で済む」ものから見直す

節約は、金額が大きく・毎月続き・一度の手続きで完了する固定費から着手するのが効果的です。こまめな節電のように毎月の努力が要るものより、一度動けば効果が続く固定費のほうが、労力あたりの成果が大きいためです。

みらい(案内役)

節約というと、まず何から見直すのが効果的なんでしょう? 優先順位の付け方があれば教えてください。

葉山 知世さん(家計コスト分析調査員)

優先順位の付け方はシンプルです。「①金額が大きい ②毎月続く ③一度の手続きで完了する」——この3つを満たすものから手をつけます。これに当てはまるのが固定費です。こまめな節電は尊い習慣ですが、毎月その努力を続けないと効果が消えてしまう。対して、通信プランやガス会社の見直しは、一度動けば労力ゼロで効果が続きます。「1回の手間で、その後ずっと効き続けるものから」とよくお伝えしています。

みらい(案内役)

固定費の中でも、見落とされがちなポイントはありますか?

葉山 知世さん(家計コスト分析調査員)

見落とされがちなのは、「契約した当時の自分」で止まっている契約です。通信費なら、使い放題にしているのに実際は月に数ギガしか使っていない、といったズレ。サブスクは、使っていないものが自動更新で生き残っている。そして保険料も、独身時代や子どもがいなかった頃のまま更新され続けているケースが少なくありません。共通する構造は「ライフステージが変わったのに、契約が追随していない」ことです。固定費は「金額」だけでなく「その契約が今の自分に必要か」という観点で棚卸しすると、漏れが見つかります。

守り②:ガス・光熱費の見直しは「公的データという物差し」で

プロパンガス(LPガス)は会社が料金を自由に設定できる自由料金制のため、同じ地域・同じ使用量でも契約先によって従量単価が大きく違います。検針票の単価を地域の適正水準と照らし、乖離があれば会社変更や交渉を検討するのが、見直しの基本です。

ここは葉山さんの本領。ガス料金の見直し手順を具体的に伺いました。

葉山 知世さん(家計コスト分析調査員)

前提として、プロパンガスは電気や都市ガスと違い「自由料金制」です。国が単価を決めているわけではなく、会社が自由に設定できる。ですから、同じ地域・同じ使用量でも、契約している会社によって従量単価が大きく違うことが、公表データを照合するとはっきり見えます。検針票の従量単価を地域の平均水準と並べたとき、明らかに上振れしている家庭は珍しくありません。「災害に強いから高くて当然」といった説明を聞くこともありますが、供給網の話と料金の妥当性は別問題です。販売側の説明だけで判断するのは危険で、公的データという物差しを持つことが、節約の起点になります。

葉山さんが挙げた見直しの手順は、次の3ステップです。

  1. 検針票で、今の「従量単価」と「基本料金」を把握する
  2. 地域の適正水準(公表されている平均価格など)と照らし合わせる
  3. 乖離があれば、会社変更や料金交渉を検討する

編集部メモ|地域別のLPガス価格を確認できる一次情報

家庭用LPガスの小売価格は、経済産業省 資源エネルギー庁のLPガス価格調査や、(一財)日本エネルギー経済研究所 石油情報センターで地域別に確認できます。まず自宅の検針票の単価を、こうした公的な調査データと照らし合わせてみるのが、葉山さんの言う「物差しを持つ」第一歩です。

守り③:保険料の棚卸しから、攻めの入口へ

保険料も毎月続く固定費です。今の保険料が家計全体のどのくらいを占め、いつ組んだ契約で、今のライフステージに合っているかを数字で可視化することが、見直しの出発点になります。

みらい(案内役)

保険料の見直しについても伺いたいです。「削っていい保障」と「削ってはいけない保障」は、どう見分ければいいのでしょう?

葉山 知世さん(家計コスト分析調査員)

正直にお伝えすると、ここは私が線を引くべきところです。「どの保障を削り、どの保障を残すか」という個別の保障設計は、生命保険・医療保険の商品選択そのもので、私の守備範囲である家計コストの構造分析の外にあります。私にできるのはその手前まで。つまり「今の保険料が家計全体のどのくらいを占めているか」「その契約はいつ組んだもので、今のライフステージに合っているか」を数字で可視化することです。そこまで整えたうえで、「どう組み替えるか」の判断は、保険の専門家にバトンをお渡しします。守りの土台は私、保障設計の中身は専門家——という役割分担が、読者にとって一番安全だと思います。

編集部メモ|保障の中身の見直しは、ここから

葉山さんが「専門家にバトンを渡す」と言った、保障の要否や組み替えの部分は、まさに保険比較ラボが扱う領域です。必要保障額の考え方や見直しの進め方は生命保険の見直しシミュレーションで、オンラインでの相談方法は保険のオンライン相談で解説しています。まず葉山さん流に「今の保険料の位置」を数字で把握してから、中身の設計に進むとスムーズですよ。

攻めへの橋渡し:浮いたお金を「仕組み」で逃さない

固定費の見直しで浮いたお金は、生活口座に混ぜず、金額を決めて別の場所へ自動で振り分ける「先取り」の仕組みを作ると、確実に将来へ回せます。

みらい(案内役)

節約で浮いたお金を、無理なく将来に回していくには、どんな進め方がいいですか?

葉山 知世さん(家計コスト分析調査員)

私が担当できるのは「浮かせる」ところと、「浮いたお金を仕組みで逃さない」ところまでです。おすすめしているのは、固定費の見直しで浮いた分を、すぐに生活口座に混ぜないこと。混ざると、余力が生まれたことに気づかないまま消えていきます。見直しで浮いた金額を決めて、その分を別の場所へ自動で振り分ける「先取り」の仕組みを作る。ここまでが守りの担当です。その振り分け先を積立にするか運用にするかという設計は、専門家と一緒に決めていただくのがいいと思います。守りで原資を作り、その受け皿を攻めの専門家が用意する。この連携が、無理なく続く家計の形だと私は考えています。

みらい(案内役)

読者がまず「今週末にできる第一歩」を一つ挙げるとしたら、何をおすすめされますか?

葉山 知世さん(家計コスト分析調査員)

一つだけ挙げるなら、「検針票と、固定費の明細を1か所に並べて見る」ことです。ガスの検針票、電気、通信、サブスク、保険の引き落とし——ふだんバラバラに届くこれらを、週末に一度、テーブルの上に全部並べてみてください。それだけで、「これ何の支払いだったか」「この単価、高くないか」という違和感が必ず出てきます。お金を動かす前に、まず「見える化」する。今週末にできて、一番効くのはこれです。

攻め:積立型保険・NISA・iDeCoの考え方(編集部の中立整理)

将来の資産形成では、積立型保険・NISA・iDeCoといった選択肢を、目的・期間・引き出しやすさ(流動性)で使い分けるのが基本です。どれか一つが万能なのではなく、家計の中での役割で意味が変わります。

ここから先の「攻め」は、葉山さんが「保険や資産形成の専門メディアに委ねたい」とおっしゃった領域です。そこで、編集部が公的な一次情報をもとに中立に整理します。なお、以下は一般的な情報であり、特定の商品をおすすめするものではありません。個別の判断は、ご自身の状況を踏まえて専門家にご相談ください。

積立型(貯蓄型)保険の位置づけ

積立型保険は、保障を持ちながら保険料の一部を積み立てる仕組みで、掛け捨て型に比べて保険料は高めになります。「掛け捨てと積立、どちらが得か」という二択で考えるより、葉山さんの言う「その支出が家計の中でどんな役割を果たすか」で捉えるのが実際的です。

葉山さんは「契約は、販売側の説明ではなく契約条件そのものを起点に読む」という姿勢を強調していました。これを積立型保険に当てはめると、契約前に確認したいのは次の3点です。

  • 途中でやめたら、いくら戻るか:解約返戻金の水準を、契約時の説明ではなく約款で確認する
  • 見えにくいコスト:保険料に含まれる手数料や付加保険料の存在を把握する
  • 時間による目減り:長く固定される契約ほど、その間の物価変動(インフレ)の影響を織り込んでおく

NISA・iDeCoとの使い分け

NISAとiDeCoは、いずれも税制優遇のある資産形成の制度です。積立型保険とは仕組みが異なるため、目的に応じて併用も含めて考えるのが一般的です。

編集部メモ|制度の一次情報

NISAは、少額投資非課税制度です。運用益(売却益・配当)が非課税になり、いつでも引き出せる流動性の高さが特徴です。制度の詳細は金融庁のNISA特設ウェブサイトで確認できます。
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、掛金が全額所得控除の対象になり運用益も非課税ですが、原則60歳まで引き出せません。老後資金づくりに向いた制度です。詳細は国民年金基金連合会が運営するiDeCo公式サイトをご覧ください。

ざっくり言えば、いつでも使える柔軟さを重視するならNISA、老後資金を税制メリットを効かせて積むならiDeCo、保障とセットで備えたいなら積立型保険、という整理になります。どれが自分に合うかは、家計の状況や目的によって変わります。必要保障額や商品の比較検討については、30代の生命保険比較AI保険相談ができる窓口の比較もあわせて参考にしてみてくださいね。

自分で難しいときは「物差しを借りる」

自分だけで家計を見直すのが難しい一番の理由は、比べるための「物差し」を持っていないことです。専門家に相談する最大のメリットは、公的データ・相場・法令といった客観的な基準を借りられる点にあります。

葉山 知世さん(家計コスト分析調査員)

自分だけで見直すのが難しいと感じる一番の理由は、「比べる物差しを持っていない」ことだと思います。自分の契約が高いのか妥当なのか、判断する基準が手元にない。専門家に相談する最大のメリットは、この物差し——公的データや相場、法令といった客観的な基準——を借りられることです。守りの固定費なら私たちのような調査の専門家に、保険や資産形成という攻めなら専門メディアや専門家に。分野ごとに適した物差しを持つ相手を選ぶのが、遠回りに見えて一番確実です。

まとめ:守りと攻めは、順番でつながっている

家計の「守り」と「攻め」は、どちらかを選ぶものではなく、順番でつながっています。まず守りで足場を固め、そこで生まれた余力を攻めの原資にする——この流れが、無理なく続く家計の形です。

葉山 知世さん(家計コスト分析調査員)

まず守りで足場を固める。固定費という、努力すれば確実に効く場所から手をつける。そこで生まれた余力が、攻めの原資になります。そして、その余力を実際に育てる場面では、どうか一人で抱え込まず、その分野の物差しを持った専門家を頼ってください。私は固定費という守りの側から、皆さんの足場づくりを支えます。販売側の説明をそのまま受け取るのではなく、事実とデータを自分の物差しにして、納得して選ぶ。その積み重ねが、家計をいちばん強くします。

みらい(案内役)

葉山さん、ありがとうございました! 「まず守りで器の穴をふさぎ、浮いた余力を攻めに回す」——順番がクリアになりました。ガス代の見直しのような足元の一歩が、将来の備えにつながっていくんですね。保険比較ラボでは、この「攻め」の部分、保障や資産形成の中身の比較を引き続きお手伝いしていきます。まずは今週末、検針票と固定費の明細を並べるところから始めてみてくださいね。

この記事を書いた人

保険比較ラボ編集部です。生命保険・損害保険の商品と相談窓口を、一次情報と中立的な比較軸で検証・解説しています。一般社団法人働き方改革協会 SDGs推進本部の「SDGs推進メディアパートナー認定メディア」です。

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